SPECIAL TOPICS
駐車場のアレンジメント
札幌の駐車場の運用状況
ここ10年位で、札幌に限らず全国的に遊休地の活用が進んでいます。
今回のタイトルの「駐車場」。特に賃貸住宅に付属する駐車場にフォーカスして考察しています。その前に…まずは全体的な市況から。
遊休地の活用としての一手で、月極駐車場・コインパーキング・カーシェア・パーキングシェアリングなどここ数年で選択肢も多数増えてきました。
特にシェア関係は現代のニーズにマッチしていて、全国でさかんに取り入れられている手法の一つです。
シェアについて札幌は、というとまだまだ未開拓の部分が多く。一時期は大手自動車メーカーの参入もありましたが、残念ながら各業者共に進出→撤退を繰り返している状況です。撤退の最大の理由は、「採算性」これに尽きます。
札幌に限らず、北海道全体でみても降雪地であるために、本州よりも多くの経費が掛かります。
- ワイパー、タイヤなどの交換に関する人件費や諸経費
- 除雪費用や駐車場自体のメンテナンス費用
- ガソリン代の高騰(冬場は特に高額になります)
また、稼働でみても安定せず、夏の稼働率より降雪時期の稼働が圧倒的に減るために、年間を通してキャッシュフローにかなりブレが生じる点もネックとなるポイントです。駐車場は本州よりも安価なものの、それでも駐車場料金を回収出来ないほどのマイナスになるケースも多々あります。
カーシェアの誘致・導入・結果
過去、築古物件にカーシェアの誘致を実施したことがあります。札幌駅から約2km、幅員25mの幹線道路沿い、タワーパーキングです。学生も多い地域で、免許はあるものの車所持率は著しく低く。但し、近隣駐車場はオフィスや一般社会人などの利用率は大変高く、常時空き待ちが掛かる程でした。
結論から言うと、そんなエリアでも「失敗」です。事業者は1年半程度で撤退してしまいました。学生の利用は相当低く、近隣の方の利用がメインだったようで。そもそも、ドライブビギナーの学生にとっては冬場の雪道運転がとっても怖いようで、かなり低い利用率でした。個人的には、折角のキャンパスライフで出来た仲間と共に海へ山へ、色々カーシェアで出かけてほしかったなぁ…という気持ちもありましたが、中々厳しい現実を突きつけられました。
アパート付属駐車場の運用
上記は一つの例ですが、駐車場の扱いはPMにおいて非常に繊細で悩ましいところで、住戸が満車でも駐車場に空きが発生した場合は様々なパターンを想定します。
1、空車のまま運用し、希望者が入れば貸し出す
2、外部に向けてリーシングを行い、常時満車稼働を目指す
3、部屋とセット貸しにして、ロスが無いようにする
1は空室損の発生は予想されますが、入居者の保持や空室発生時に駐車場空き有りとしてリーシング効果を高められます。
2は高稼働を維持できますが、放置車両の発生などのリスクが高まります。また、入居者と駐車場利用者でのトラブル発生リスクもあります。
3は最も空室損とリスクが少ないのですが、リーシング時に車両利用者以外は入居出来ないのでリーシング遡及効果が下がります。
※3は「(知人の)来客時駐車場」として確保する方もいますが、絶対数が少ないので訴求効果としてはやはり低いとみなしています。
これはどれも定量的な答えはなく、建物によってアレンジを変更しています。また、時期や台数、区画によっても繊細に取り扱わないと平気で減収していくので設定に関しては中々神経を使うことも多いのです。夏はともかく、冬は降雪によって大きく状況が変わるため、新築時の設定や築古物件のリニューアル後でもその設定が正しいかどうかは数年に渡る定点観測で調整をする必要があります。
車幅の2極化と駐車場幅
最近の新車は車幅が大きくなる傾向で、いわば小型車と呼ばれる1695mmサイズが減ってきて、 諸外国向けのサイジングをベースとした1780mm以上が増えてきました。駐車場幅は2500mmが一つの基準で、アパートでは2000mm~2300mmも多く見られます。余裕を持って駐車する場合は、2500mmで統一することがベストですが、当然ながら駐車スペースの減少や、駐車場幅が駐車スペース幅で割り切れない場合は端数のスペースが発生するためにキャッシュフローに影響します。
ハイトワゴンでお馴染みとなった軽自動車の幅は1480mmと最も小型で、駐車場においては「軽専用」としてスペースが確保される事も多いですね。幅の端数調整にはぴったりで、困ったときは駐車幅2000mmにして軽専用というです。
但し、2013年をピークに、軽自動車の新車販売台数は上昇することなく下降したままになっています。(全軽自協の統計データより)
https://www.zenkeijikyo.or.jp/statistics
SUVや小型車(アクアやノート)などにも人気が分散され、車両の小型化というよりもデザインや燃費など、消費者の選択肢が広がった点、軽自動車の重量税の増税なども少なからず影響していると思われます。
上記観点から、軽自動車スペースを大量確保しておいて台数増加=収益増という考えはリスキーだと考えます。
駐車場サイズにおける最適解
上記は一例です。普通・大型・軽と組み合わせて幅を調整することで、駐車場台数を7台まで増やすシミュレートが出来ます。一定で並べずに、交互に駐車場を配置しているのは出し入れと圧迫感を緩和するためです。大型車は当然ながら車全長も長くなるため、両サイドに並ぶとかなりの圧迫感になります。そのため、全長の最も短い軽自動車と組み合わせて出し入れが容易になるようにシミュレーションしています。
今回は16mの幅を有効活用というイメージですが、10cm刻みで大きく変わってきます。特に⑦の駐車場は最奥になるので、右側に50cm程度バッファが無いとかなり入庫しにくくなり、借り手から敬遠されるだけではなく、トラブルの要因ともなります。
また、向い合せで駐車スペースを取る際には、車路の幅もしっかり確保しなければなりません。車路が狭い場合、切り返しが難しくなるために駐車スペースの車幅がいくらあっても、入庫しにくい状況が出来上がります。
尚、駐車場にロードヒーティングの設備が敷設されてない場合は除雪が必要ですが、除雪業者に依頼する場合は「除雪と排雪(常時)」なのか、「除雪と排雪(1ヶ月に1回程度)」なのかでも大きく費用が変わります。意外と見落とされがちな部分ですが、ともすれば常時排雪と定期排雪の料金差は⑦番駐車場の1年分の駐車料金と異なる位の金額になるケースもあります。
従って、時に「貸さずに除雪スペースとして空けておく」という手段も有効です。そうすることで、①~⑥の入居者の雪捨て場としても確保出来るために若干なりとも不満は軽減されることでしょう。
※除雪のお話はまた今度の機会に。
実際のアレンジ例
これは以前行った実例です。オーナー自主管理物件の売買、所有権移転からの管理事例ですが、入居者へ適当に停めさせていたために凄まじいロスが発生していました。また、15戸のうち7台しか駐車出来ないため、駐車場が無い住戸に対してのリーシング訴求力も低下していました。
画像左側の柱・通路部分に水道メーターがあり駐車不可だったり、様々な要素が絡んでいましたがこれで決定。現入居者にも一軒一軒説明し、それぞれ最も停めやすい位置に移動してもらい、新規リーシング開始となりました。ちなみに、自主シミュレーションする前に、業者にも依頼しましたが…
実際に現地でイメージしてみたら、とても狭く…特に柱内側の左下、右下の車はかなりのドライビングテクニックを要します。ロスも大きく、これをきっかけに自社でアレンジすることになりました。
まとめ
空間を四方から想定し、自然状況なども加味した駐車場のシミュレーションは面白いものです…が。管理をお引き受けする物件の多くは「なんとなく」で構成された駐車場が多いのも事実でして。
入居者に気持ちよく、安全に駐車場を使ってもらい、その上で最も効率の良い収益を上げられる最適解をご提案出来るように、引き続き研究していきます。