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意外な成長を続ける札幌の温泉街、定山渓の地価上昇と街の魅力
はじめに
今回の記事は、タフトにて管理受託しているアパートオーナー向けの記事「タフトレポート」から抜粋した記事です。現在の不動産トレンドや特徴的な街の変遷、様々な運用手法について毎月執筆しており、現在は第56号ともう少しでまる5年を迎えようとしています。そのうちオウンドメディアにも過去の記事も登場させようかな、と常に考えているのですが何かと言い訳しつつ実行に移せずに1年少々経過しました 笑
少しずつ実行しようと思い、今回記事化することに決めました。これを宣言したとてお読みいただく皆様には何の関係もないのですが、こうやって言い訳することで体がその方向に向くだろう、という準備のようなものですので恐縮ですがお付き合いくださいますと幸甚です。
ちなみに、今回の題材である定山渓ですが、毎年秋に家族で訪れる風習がありまして。紅葉が素敵で秋を深く感じることが出来るのですが、同時に今回は人流が地価の上昇を匂わせたために観光のほか、分析と取材という楽しみが加わってしまいました。興味本位な部分もあるので全く苦ではないのですが、こういうことがあるのでいわゆる「慰安旅行」には向いていないことも自覚しています。気になった方向に行きがちなので、集団行動はやや苦手です。
そんなこんなで、本題です。
国内企業の努力を中心に復活する隠れリゾート
札幌市民はもちろん、北海道民であればおなじみの札幌の奥座敷「定山渓」エリア。札幌駅から車で45分程度、都会の喧噪から離れた古き良き温泉街です。
コロナ渦以前は非常に多くの外国人観光客も訪れ、修学旅行生はもちろん札幌企業の小規模慰安旅行や多くの会の決起会などでも利用されることから、幅広い客層を集客している地域でしたが最近では新たな動きが見られるため、今回はこの地域についてレポートをまとめてみました。
上昇傾向にある公示地価
趣のあるホテルが立ち並ぶ温泉街でしたが、近年老朽化が進む建物も多く廃業したホテルも複数存在しています。そのため、全国のさびれた温泉街の問題と同様に廃ホテルが醸し出す暗い雰囲気がやや目立ち始めていたのは10年ほど前でした。
そこから外国人観光客の増加やワーケーション、そして高級志向などのリブランドが加速し、2019年には過去最高の地域訪問者数まで復調しており、最近では北海道では珍しく日本人観光客の姿も多く見られる独特の成長を見せている地域です。その成長は地価にも反映されており、昨対変動率は+6.23%と大幅に上昇しました。
出展:土地価格相場が分かる土地代データ https://tochidai.info/area/jozankei/
なお、この地価は3年連続で上昇しており、この成長率はバブルの頃に迫る勢いです。ちなみに坪単価の過去最高額は1992年の34万で、当時の勢いは凄まじいものだったと実感できます。
他エリアと異なる独自の成長
リゾート地として比較されるのはニセコやルスツ、富良野などいわゆる「外資系」の資本投下が行われている地域ですが、定山渓は国立公園特別地域であること、新規の温泉の発掘規制があるために外資ホテルの建築が難しいエリアです。地域で唯一の「シャレーアイビー定山渓」はニセコでも展開するブランドで1泊6万円とハイクラス向けのホテルですが、ここを追従して建築されることは現時点では確認できません。
一番の大きな違いとして挙げられるのは、「意味のわからない価格での取引」がないことです。原野商法で購入した坪数千円の土地が突然1億円に化けたり、海外企業による数万坪の開発が行われるといったような一発逆転のような地域ではなく、あくまでも一般的な取引が行われる地域であることから、他エリアのように取り立てて注目が集まることはありません。
その代わり、地道な改善を続けるのが定山渓の特徴です。一例として、全国各地で展開されている「かわまちづくり」に定山渓は登録されています。かわまちづくりとは、「地域の「資源」と「知恵」を活かした河川の利活用促進による地域活性化や観光振興を目的とした取組み」で、定山渓では温泉を利用した名物の足湯と豊平川をかけ合わせて街自体のリブランドに取り組んでいます。
無料で利用できる名物の「足湯」
新たな定山渓のカタチ
定山渓エリアは少しづつではありますが、街の開発も行われています。ここ数年では民泊や無人ホテルが続々開業し、特に定山渓西エリアにおける「第一寶亭留」による「山ノ風マチ」と名づけられた8,500平方メートルに及ぶ複合商業施設が2021年に開業されました。自然を感じつつ足湯を楽しみながら飲食を楽しめる特徴的なカフェ、ベーカリー。長期滞在者向けのサウナ付き宿泊コテージやグランピングなど、これまでの定山渓温泉の概念を覆すような施設で宿泊客から日帰り客まで満喫出来るエリアとなり、流行に敏感な多くの若者も訪れるようになりました。
元々の既存エリアはレトロな雰囲気もあり、新旧を楽しむことが出来る地域に成長していることから今後もじわじわと観光客の来訪が期待できます。
定山渓は北海道の四季をダイレクトに感じることが出来る地域で、近くには札幌近郊で最高の雪質を誇る札幌国際スキー場やダイナミックな景観の豊平峡ダム、初心者でも気軽に登山が楽しめる札幌岳、SUPやラフティングが楽しめる豊平川など通年で様々な表情を見せてくれます。また、夜にはプロジェクションマッピングやライトアップで美しく温泉街を彩ることもあり、外資の入らない、日本特有の文化が楽しめる隠れ家的な存在と言っても過言ではありません。
不動産投資としての定山渓エリア
温泉街ということもあり、居住用賃貸はほぼ皆無です。需要も弱く、あえてここで運用する理由も見当たりません。反面、民泊としての利用は今後伸びる可能性があります。近隣の区分マンションでは民泊利用が可能なマンションがまだあり、購入価格も300万程度から可能ですのでリスクは比較的低く、リゾート地での運用にチャレンジする方も少なからずいます。なお、皆様からのリクエストにお応えして現在タフトでは民泊事業者の申請を行っており、来月から少しずつ実験的に運営を開始する予定です。もしご興味のある方がいれば、スタッフまでお気軽にお声がけください。
今回は滅多に触れることのない、定山渓エリアの不動産市況と開発について記述しました。札幌に住まう者として、一度は深掘りしてみたい街でしたので良い機会を得たと感じています。ちなみに定山渓からほど近い場所に日本で最もデンジャラスな動物園「ノースサファリサッポロ」があります。多くの動物とのゼロ距離でのふれあいが出来る面白い場所ですので、まだいった事のない方はぜひ足を運んでみてください。おすすめです。